研究目的は米国議会図書館所蔵の国民学校期(昭和16年-昭和21年)の日本教科書に書き込まれている指摘が、太平洋戦争遂行に国民を駆り立てたと思われる箇所の指摘であり、戦後の墨塗り教科書の原資料であったのかを究明することである。 研究助成の最後の年に当たり当教科書の目録化を実施し、また当資料の保存について議会図書館担当者と話し合った。目録化については、一般的な図書館の目録とは異なり当教科書に書き込まれている所有者の氏名や、所蔵印などに注意し実施した。また議会図書館所蔵の日本教科書には、満州総督府や南洋庁発行の教科書や、布哇やカリホルニア州で発行された日本語読本なども含まれているため、すげての教科書目録を作成した。作成した目録は「帝京平成大学研究紀要」(第22巻・第1号 2011年3月)で公開した。また、付箋の入った教科書(すべて国民学校期の教科書である)については、昨年の撮影に引き続きDVD14枚に撮影した。また陸軍師範学校や国民教育局長印のあるページはコピーをとり保存した。これらの資料は希望者に公開している。 日本おける調査では国民学校期(昭和16年-昭和22年)までの国会審議および官報の教科書の記述について調査した。昭和20年8月までの国会における教科書審議においては、修身教科書に郷土の偉人を掲載することを求めた請願が中心であった。また、官報においては教科書局の設置・人事が中心であった。墨塗り教科書の入手を試みたが音楽科教師用指導書1冊だけが入手できた。 墨塗り教科書の分析は当資料を用いて今後さらに詳細に行う必要を感じた。
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