本研究は、YWCAの活動を分析して、近代の日本女性がどのようにしてキリスト教的知性を形成して、彼女たちのキャリアや生き方を通じて、日本社会にどのような文化貢献をなしたかを実証的に明らかにすることを目的に調査を進めている。 調査の初年度にあたる2008年度は、(1)機関誌『女子青年界』の調査・分析、(2)アメリカでの調査により、YWCAの活動家であった木村雪と大竹満洲子の滞米中の調査、アメリカで開催されたYWCA関係の行事への日本代表の参加活動の調査を目標に研究を推進した。(1)の機関誌『女子青年界』の調査では、明治から戦後に至るまでの総目次を一覧化することができたが、本作業には予想以上の時間と労力を費やした。次に明治期に限り、即ち『明治の女子』に限り、記事の分析をすすめた。具体的には、『明治の女子』の書誌的整理を行い、発行年月目、頁数、定価の一覧化、蘭構成の変化、欄ごとの記事傾向、発行母体、発行部数、読者層などについて調査を進めた。次に比較的多く寄稿している執筆者のキャリア調査を終え、執筆者の思想傾向などを明らかにする作業を進めたが、YWCAの会長であった井深花を始め、当時のYWCAの中心的な人物の思想背景などに関する調査は進行中である。即ち、井深などの他の雑誌への寄稿記事を整理するまでには至っていない。したがって、指導層が誌面を通じてどのような啓蒙を行ったかの分析までには至らなかった。(2)に関しては、アメリカに2週間、ニューヨークのユニオン神学校、ハートフォードセミナリー、ニューヘブンのエール大学、オーバリン大学、シカゴ大学を廻り、大竹と木村に関する貴重な資料を得ることができた。また、現在エール大学保管の大竹のドクター論文を請求中である。以上、初年度の計画をほぼ達成できたが、基礎的な調査を中心に行ったので、まとまった形で研究の公開までに至ってはいない。
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