これまで、女子のキリスト教学校教育が日本の近代化にもたらした意義は、高く評価されてきた。しかし、学校とか、教会とかの組織ではなく、一つの社会的ムーブメントであるYWCAの活動が、日本の近代化に果たした役割を明らかにした研究は未拓である。 本研究は、明治から昭和戦前期までを対象として、日本YWCAを次の2点の視点から分析して、女性キリスト者の知的形成がどのように行われ、どのような文化貢献をなしえたかを明らかにすることを目的としている。第1に、組織活動の歴史的分析である。第2に、日本YWCAで活動した経験を持つ女性のライフヒストリー研究である。この2点の分析を通じてYWCAがどのように日本の近代化に貢献したかを明らかにしょうと、昨年はYWCAの機関誌『明治の女子』、『女子青年界』のデーターベース化を行った。また、活動家であった大竹満洲子と木村雪のアメリカでの足跡調査とを中心に調査した(第1年度)。 本年度(第2年度)は、第1と第2の作業に関して次のように展開した。(1)YWCAの機関誌『明治の女子』の書誌分析を行い、同誌の誌面を通じて発信された当時のYWCAの指導者やキリスト教指導者の言説を分析して、神への信仰を中心とした人格形成によって、近代的な女性像をモデルとしていたことを明らかにできた。また、(2)YWCAの機関誌『女子青年界』の情報の特質を明らかにするために、『新女界』の書誌的な整理を試みた。次年度計画している大正以降の『女子青年界』の誌面を『新女界』と比較して分析してみるためである。(3)YWCAの活動は地域によっても異なるため、支部の活動から明らかにする必要があるので、東京YWCAの機関誌である『地の塩』のコピーを収集して、データーベース化をすることができた。(4)木村雪、大竹満洲子のライフヒストリー研究に関しては、昨年アメリカで収集した資料を中心に整理分析し、研究会で報告した。なお、大竹のエール大学に提出されたドクター論文を3月になってようやく受け取ることができた。
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