本研究の目的を達成するために、2点の研究目標をかかげた。第1点は、女性のキリスト教的知性形成と自立を目標としたYWCAの事業活動に関する詳細な調査を行う。いま一つは、活動に参画した女性たちのその後の足跡調査を通じて彼女たちのキャリアコースの比較検討を行う。これら二つの面からの調査を通じてYWCAの歴史的貢献を明らかにする。 研究の最終年度に当たる本年度はこれまでの資料収集と調査をもとにして、次のような研究実施計画を立てた。(1)解題を付して東京YWCAの機関誌『地の塩』の総目次の冊子を刊行する。(2)日本YWCAの機関誌『女子青年界』の詳細な書誌的な整理をし、誌面を通じての女性キリスト者の知的形成がいかにあったかを明らかにする。(3)『女子青年界』と『地の塩』との刊行が重なる時期を対象として誌面を通じての女性キリスト者の知的形成がいかにあったかを明らかにする。(4)YWCAの活動家として知られた木村雪子と大竹満洲子などの女性キリスト者のライフヒストリー研究を完成させる。 本年度は以下のような研究目標を達成することができた。 (1)に関しては『科研費報告書東京YWCA機関誌『地の塩』総目次』の刊行。連携研究者影山礼子が「書誌改題」を、榑松が『地の塩』発行前の東京YWCA活動の実態を知るために『女子青年界』の彙報欄から記事を抽出し、東京YWCA創立当初からの活動が概観できる「記事一覧」を作成し、同書に収め『総目次』を刊行した。(2)に関しては、科研費報告書(代表菅原明芳)に、本研究で行った書誌分析に基づき、キャリア教育との面で、日本YWCAの女性の労働に対する取り組みを時期区分して検討した。(4)に関しては、木村雪研究は研究協力者の堤稔子が担当、大竹満洲子は榑松が担当して、その成果を関東学院法学研究所の助成を受けて同研究所紀要『ジュリスコンサルタス』収めたが、研究の一部が残されている。なお、(3)の課題に関しては、書誌分析が終了した段階である。
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