本研究は、戦後、大学における通信教育が一つの「教育方法」としてではなく、「通信制」の大学という形で制度化されるに至った経緯とその背景、そしてそれがもたらした結果を明らかにしようとするものである。具体的には、(1)『学校教育法』成立過程における通信教育、(2)『大学通信教育基準』(大学基準協会)成立過程における「正規の課程」としての通信教育、(3)私立大学における通信教育構想と通信教育課程の実態、の3点を明らかにするため、以下の関係資料の収集および分析を行った。 (1)文部省および大学基準協会を中心とする日本側関係資料 ・名古屋大学教育学部教育行政及び制度研究室・技術教育学研究室『学校教育法成立史関係資料』 ・大学基準協会所蔵の大学通信教育関係資料、ほか (2)ネルソンおよびマッグレール文書を中心とするGHQ(CIE)側関係資料 ・棚橋正廣『GHQ(CIE)文書より見た通信教育の発足』(2001年)第1部「GHQ/CIE文書における通信教育関係文書(特に成人教育担当官ジョン.M.ネルソン文書を中心に)、ほか (3)大学通信教育を実施する私立大学側関係資料 ・法政、慶應義塾、中央、日本女子、日本の5大学の通信教育に関する『年史』、『入学案内書』、『機関誌』等の刊行物、学則等の規程、学生数等に関する調査データ また、明治期以来の講義録と戦後の大学通信教育の関係、そして「通信制」大学以外め選択肢としての大学エクステンションについて検討するため、その一事例として、酪農学園に関する文献調査および現地視察を実施した。
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