本研究は、大学生及び教師を対象とした面接調査や質問紙調査を通して、算数・数学の学力観及び学習観に影響を与える要因、学習観が学習指導に及ぼす影響等を明らかにし、構成主義的な授業のための諸原理と授業モデルを構築することを目指す。本年度は、約150名の大学生への簡単なアンケートをもとに理論的サンプリングを行い、半構造化面接法による面接調査を実施して、グランデッド・セオリー・アプローチによる質的分析を行った。その結果として、算数・数学の得意不得意、好き嫌いの個人差が大きいこと、授業が学習者のペースに合っていなかったり、考える、発表するなどの学習活動が少なかったりすると学習のつまずきが生じやすくなること、つまずきへの対応の良し悪しが学習結果や算数・数学の学習観に影響を及ぼすことなどを明らかにした。そして、授業のあり方のカテゴリーのサブカテゴリーとして、授業のパターン、授業のペース、考える場の設定、教科書の使用、具体物や道具の使用、生活とのつながり、学び合いなどを抽出した。また、これらの面接調査の結果や抽出したカテゴリーに基づいて、算数・数学の学力観及び学習観に関する質問紙調査の項目を作成した。来年度は、3大学の学生を対象とする質問紙調査を実施し、量的分析を行って、得られた知見の検証と一般化を図る。さらに、授業のあり方のサブカテゴリーに着目して、来年度予定している面接調査の対象者となる教師の理論的サンプリングを行った。理論的サンプリングにあたっては、算数・数学の授業参観、授業実践に関する著書や雑誌論文、新聞記事の収集を行い、それらを検討して対象者候補を選定した。
|