本研究は、大学生及び教師を対象とした面接調査や質問紙調査を通して、算数・数学の学力観及び学習観に影響を与える要因、学習観が学習指導に及ぼす影響等を明らかにし、構成主義的な授業のための諸原理と授業モデルを構築することを目指す。本年度は、大学生への面接調査の結果をもとに質問項目を作成し、約200名の大学生を対象として質問紙調査の予備調査を実施した。来年度は、予備調査の分析結果をもとにして本調査を実施する。 また、算数の授業参観、授業実践に関する著書や雑誌論文、新聞記事からタイプの異なる教師を選定し、面接調査を実施した。対象者は小学校教員2名(A教諭、B教諭)、面接時間は一人あたり約3時間20分である。録音したデータを逐語録として起こし、分析の対象とした。修正版グランデッド・セオリー・アプローチによる質的分析を行った。まず、各教師の授業実践について分析し、モデル図を作成した。A教諭は、子どもが追求する楽しさを重視しており、子ども自身が問いをもち問題解決できるように、ほめて価値づける、考えをゆさぶるなどの教師の働きかけや授業構成の工夫があった。B教諭は、子どもがわかるできる喜びを大切にしており、子どものつまずきをなくすための手立てとして、自作プリントやミス分析の授業などの工夫があった。次に、両教諭のデータを合わせて、分析を行った。その結果、子どもをよくしたいという強い思い、間違いをポジティブにとらえる学級づくり、子どもの気づきや発見の重視、子どもをほめること、教師同士の学び合いなど、いくつかの共通点を見出すことができた。来年度は、さらに対象者を増やし、一般化を図っていく。
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