算数・数学の学力や学習観に影響を及ぼす要因について検討するため、大学生への面接調査の結果を基に質問項目を作成し、576名の大学生を対象として質問紙調査を実施した。欠損値のあるデータを除きサンプル数を485として、共分散構造分析によるパス解析を行った。教材の工夫や学び合い、つまずきへの対応が児童に合ったペースの授業に影響しており、児童に合ったペースの授業をすることで学習意欲が高まり、学力や学習観に影響を及ぼすことが示された。 また、算数の授業参観、授業実践に関する著書や雑誌論文、新聞記事からタイプの異なる教師を選定し、小学校教員3名を対象として面接調査を実施した。面接時間は一人あたり約3時間である。録音したデータを逐語録として起こし、分析の対象とした。修正版グランデッド・セオリー・アプローチによる質的分析を行った。まず、各教師の授業実践について分析し、3つのモデル図を作成した。その後、3名の逐語録を基にして算数の授業のモデル図としてまとめた。その結果、次の6つのことが明らかとなった。1)算数の面白さや学ぶ楽しさを重視している。2)間違いやつまずきを肯定的にとらえ、子どもの学び合いを多く取り入れている。3)子どもの気づきや発見が生まれる状況をつくり、算数的な価値に気づかせるようにする。4)できる子・できない子など、個への配慮を行う。5)ほめることを大切にし、評価の基準を示して自己評価・相互評価、教師による評価を行う。6)校内研修やサークル等において教師自身の学びを大切にしている。子どもの気づきや発見が生まれる状況をどのようにつくり出すかについては、各教師による違いが見られた。
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