研究概要 |
ニューヨーク市学区教育委員会制度に関する主な機関の改革提言を整理するなかで、関係者に対する面接調査を2010年3月に実施し、ニューヨーク市学区における教育ガバナンス改革の特質を明らかにするとともに、以下の成果をおさめることができた。 (1)2015年まで「市長支配」を引き伸ばした州法改正の評価をめぐっては、2002年以降の教育改革の成果をめぐる評価とも関連して、面接したクライン市教育長らの積極的にみる立場と、これに疑問を抱く立場(面接したLeonie Haimson, Lisa Donlan, Dr. Viteritti)で全く対立している構図を解明することができた。 (2)上記のことと関連して、2002年以降のクライン市教育長を中心にすすめられている改革("Children First")の評価、すなわち子どもたちの学力が向上したかどうかについても、市統一テストの成績が向上したとする市教育長らの説明と、全米学力調査(NEAP)では成績は横ばいとする立場とで全く評価が分かれていることが明らかとなった。この点では、Diane Ravitch et al. New York Schools Under Bloomberg and Klein, Lulu, 2009が大変参考になった。 (3)いずれの立場でも、今日の教育改革、学校改善を進めていくうえで、Distributed Leadership(分散統合型リーダーシップ)の考え方と実践が定着しており、各学校のSchool Leadership Teamや市内32に区分された地域のCommunity Education Councilは大変活発な議論が展開され、学校を自分たちで統治しているという自負をもっているとする質的データを収集することができた。
|