本研究は、地方分権改革によって進展しつつある自治体行政の総合化のもとでの子育て・教育行政の再編状況の調査を行い、教育・保育、雇用・労働、福祉・保健・医療など、各行政分野の連携を図った総合的な子ども行政システム構築のための基本的視点と条件を提示することが目的である。本年度は、主に不登校と高校中退を切り口とした調査を札幌市で実施した。 (1)不登校行政調査札幌市では教育委員会学校教育部と子ども未来局が主要な子ども関連行政部局であるが、依然として不登校行政には統一的な施策・計画がないままである。ただし、市教委と子ども未来局で定期協議が行われ、不登校対応についても若干の連携がある。市長主導で子ども未来局が設置され、子どもの権利条例が制定されたことが、一定の変化を生み出している。 (2)高校中退調査高校中退経験者インタビュー調査を実施して、中退に至る経緯と背景、中退後の軌跡を明らかにし、行政の課題を検討した。中退には社会階層による規定性が強く、学校教育への復帰を当人が臨んでいても、実際上難しい場合も多い。札幌市では、生涯学習系列を中心とする若者行政がハブとなり、連携の体制を構築しつつある。 上の調査と並行して、日本教育学会では、外部との連携を図った高校の取り組みについて、日本教育行政学会では包括的な支援行政の課題について発表し、また日本の若者支援行政の動向評価に関する論文等を発表した。 これまでの研究から、子ども若者行政の総合化は一定の進展を見せていること、特に首長(部局)の動きが大きな役割を果たしていること、しかし教育委員会との連携については依然として課題があることなどが明らかになった。
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