本年度は、2000年分権改革-特に、自民党・小泉内閣による三位一体改革の一環として実施された義務教育財政制度改革により、地方の義務教育財政の実情や教育行政運営がどうなっているのかについて調査研究に取り組んだ。財政状況が厳しく、また、離島僻地等を多く抱えている都道府県の中から、北海道と沖縄県を選び道教育庁と県教育庁へのインタビュー調査を行った。これらのインタビュー調査からは、厳しい地方財政の下で教職員給与費の削減等により国(文部科学省)の義務教育費国庫負担制度で保障されている総額額を下回る教職員給与費を計上せざるをえない実情や、準要保護に対する就学援助補助金が廃止されたことで市町村の就学援助事業の縮小と市町村格差が拡大している実態等が明らかになり、三位一体改革で実施された義務教育財政改革が多くの問題を生起させていることを確認できた(インタビュー調査の内容は、『分権改革下の自治体教育行政-北海道・沖縄のインタビュー記録』2010年3月を参照)。 また、本年度の上記のインタビュー調査と昨年度の文部科学省関係者へのインタビュー調査等に基づき、政治改革と三位一体改革下における教育政策過程の変容と三位一体改革下の地方義務教育財政の実態・問題、それら問題を改善していくための新しい教育行財政制度の在り方等について執筆し、『教育改革のゆくえ-国から地方へ』(ちくま新書2010年2月)として出版した。
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