英国における大学教員のキャリア計画等に関する調査研究により、次のようなことが明らかになった。英国の大学教員のキャリアパスは、講師(lecturer)から教授(professor)に至る研究の専門分野を中心とするキャリアパスと、講師から上級講師など専門分野もしくは専門分野横断的な教育キャリアを中心とするキャリアパスとに大別される。一般に、PhD取得段階を含め初期段階では研究活動に活動を集中し、中年前期、講師時代には教育活動に集中、中年後期には再び研究に集中し、最終的には教育および管理運営活動に集中するといった、キャリア段階ごとの責務についての共通認識がみられる。 教員の職務には、主に教育、研究、管理運営の3つの活動領域がある。それぞれの職務内容について、全英の高等教育機関代表者と教員組合など関係者の間での合意にもとづいて、枠組みが定められている。各高等教育機関は、それぞれの活動領域別に大学での必要性に応じて、とくに新任者を中心に職務遂行をスムースに果たせるような支援としてスタッフ開発(staff development)もしくは専門職能開発(professional development)の機会を、教員を含む職員全員に提供している。 いくつかの機関における担当部局でのヒアリング調査では、近年、教員の側からプロジェクト研究のマネジメント能力、教育プログラムを管理運営するマネジメント能力を向上するための研修についての要請が多くなっているという傾向が看取された。 このような英国の大学教員のキャリアパスや段階別の職務のバランスについての共通認識、職務内容の明確化、総合的なキャリア開発の動向は、大学教員のキャリアというものが未分化なわが国に対して、21世紀に求められる大学教授職とは何かを議論する際に多くの示唆を与えるであろう。
|