研究概要 |
本研究は、英国において、日本のファカルティ・ディベロプメント(以下FD)に相当するとされている大学教員の専門職能開発(Academic Staff Development,以下ASD,その他Academic Practiceなどと表示される)について、その教員の個別キャリア計画に対応した総合的な開発支援の構造を明らかにすることを目的とした。 結果として、英国における大学教員のキャリア計画と関連づけられた専門職能開発について、教員に求められる職能の領域(教育、研究、管理運営等)ごとの、対象、担当、推進のための政策や制度、開発支援(機関レベルおよび全英レベル))の具体的な取り組みの構造が明らかになった。教育の職能に関しては、全英レベルでの教育プロフェッショナル認定の制度が、専門機関である高等教育アカデミーを中心に整備されており、当初新任の教員が主な対象であったが、現在はティーチングアシスタントレベルからシニア教員さらには執行部レベルへと対象を拡大する方向にある。研究や管理運営(マネジメント)に関しては、人事部局(Human Resource)における専門職能および組織開発部門(Professional and Organisational Development)や全英レベルでの専門組織・機関などの専門職能開発専門のスタッフの支援をもって、体系的な研修プログラムの開発が進んでいる。特に、研究者開発では、研究者開発の枠組みがやはり全英で策定され、Personal Development Planning(PDP)を用いた個別の開発支援および記録の蓄積がおこなわれつつある。 同時に、大学ごとに、これらの研修参加によって教員が自らの職能の向上につとめるインセンティブとして、キャリアパスや職階ごとの役割・責任など職務内容の明確化やプロモーション基準の明確化などが進んでいる。こうした大学の人事制度改革の動きの背景には、全英の教職員組合による公正で透明な人事への要望や職務内容の文書化などの活動があるということなども明らかになった。
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