2009年7月の総選挙で民主党を中心とする政権が成立し、旧政権が進めてきた諸改革に変化が生じている。地方教育行政改革もその例外ではなく、地方教育行政の首長部局化、教育監査委員会の新設、学校理事会の設置などが新たな課題として急浮上してきた。また、本研究において主要な分析対象の一つとした教育振興基本計画についても、民主党が事業仕分けを導入したことにより新たな政策環境の下に置かれることとなった。地方公共団体での策定・実施も必ずしも進んでいない。 そこで、2009(平成21)年度は、子ども手当・高校無償化を含む子ども・教育政策にも注目しつつ、分析対象を新政権の教育政策とくに地方教育行政制度改革構想の分析に移し、民主党の日本国教育基本法案と地方教育行政の適正な運営の確保に関する法律案が構想する地方教育行政制度を検討した。その際、民主党が2005年に発表した「憲法提言」に示された国家像や同党が主張する「地域主権」及び「新しい公共」の文脈から、同党の地方教育行政改革構想を検討した。 また、本研究においては全国学力テストを地方教育行政のコントロール手段の一つと位置づけてきたが、同テストは民主党政権の成立により抽出方式に転換された。これにより、旧政権下が新教育基本法の下で構築しつつあった教育行政体制づくりは頓挫したと考えられる。しかし、同テストには希望利用方式が採用されたため、地方公共団体内部に新たな政治的対抗関係が生まれ、教育行政に対して首長部局や議会が政治的影響力を行使しようとする動きが強まっていることが確認された。
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