アメリカにおける初期大学拡張運動では、アダムズ、ジェームズ、イリー人の3人物が重要な役割を果たした。いずれも、ドイツ留学を通して、学問、学者の社会的使命に目覚めた気鋭の社会学者たちであった。同時に、社会福音主義者であったという事実も看過できない。 彼らは、古典派経済学を槍玉に挙げ、自由放任思想にかわる新しい社会、「協同する社会」の創造をめざした。そこでは、国家による規制もさることながら、民衆が適正に主体性を発揮することが不可欠とみなされた。とすれば、民衆の知性を涵養することが急務となる。そのための有効な方途を、彼らは、イギリスの先例に見出した。つまり、初期大学拡張運動とは、「協同する社会」の構築をめざし、民衆に高等教育を提供するための方策にほかならなかった。
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