3年目である平成22年度は、平成20年度および平成21年度の研究に引き続き、次の3つの作業に取り組んだ。 第一に、ドイツ各州での学校経営改革の現状について情報収集を進めるとともに、その基本理念や理念形成の背景について分析するという作業である。これについては、ニーダーザクセン州における学校経営改革を中心に研究を進めた。同州では、「自己責任制学校」を基本理念とし、「学校の質」の指導枠組みを明確に示した上で、全教職員、生徒代表、保護者代表から構成される「全体会議」の役割を学校経営全般にわたる事項の審議から教育的な事項の審議に特化させるとともに、教職員代表、生徒代表、保護者代表から構成される「学校理事会」と呼ばれる新たな制度を導入し、学校の質を高めることで学力向上を目指していることが明らかとなった。 第二に、ドイツ各州での学力向上の取り組みについて情報収集を進めることである。全日制学校の拡充以外の取り組みについての情報収集を進めるという作業である。これについては、前期中等教育における3分岐型学校制度の改革を挙げることができる。ベルリン、ブレーメン、ハンブルクなど、基幹学校と実科学校との統合などにより、基幹学校の抱える問題の解消を図るために中等教育改革に着手している州が見られることが挙げられる。また、全国共通の教育スタンダードのギムナジウム上級段階への拡充も進められてきている。 第三に、日本における学力向上の取り組みおよび学校経営改革の現状について情報収集を進めるという作業である。これについては、学習習慣の定着に関する取り組み、小中連携教育あるいは小中一貫教育に関する取り組みなどをとおして、学力向上のための基盤づくりが進められていることを挙げることができる。
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