最終年度である平成24年度は、これまでの4年間の研究に引き続き、次の3つの作業に取り組んだ。 第一に、日独両国の学力向上の取り組みについて情報収集を続けながら比較研究を進めた。ドイツにおける学力向上政策の特質として明らかとなったのは次の三点である。①連邦レベルの取り組みによって「教育スタンダード」や「教員養成スタンダード」など、さまざまなスタンダードづくりが進められていること、②州間での競争と協力によって学力向上が目ざされていること、③「教育モニタリング」の観点から、各種研究機関における学術的研究にもとづいて改革が進められていること、である。これらの点は同時に、日本の学力向上政策の特質とは大きく異なることが明らかとなった。 第二に、日独両国の学校経営改革の現状に関して情報収集を続けながら比較研究を進めた。ドイツにおける学校経営改革の現状として明らかとなったのは次の三点である。①学校経営の主体となる学校当事者の拡大および多様化への対応が課題となっていること、②全日制学校に見られるように、学校経営の対象となる活動内容の拡大および多様化への対応が課題となっていること、③民主主義教育にもとづく生徒参加の強化が課題となっていること、である。日本においても、コミュニティ・スクールの取り組みに見られるように、学校経営の主体となる学校当事者の拡大および多様化への対応が課題となっていることが指摘できる。 第三に、日独両国における学校経営改革の特質について分析し、考察を加えることであった。第二で挙げた三点からみると、①の点は両国において共通して見られる課題であることが明らかとなった。しかし、③に関しては、ドイツでの取り組みが進んでいる一方、日本ではまだその素地すら形成されていないことが明らかとなった。
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