研究概要 |
わが国の人材育成は企業内教育が主流を占めており、新規学卒者に対する長期間にわたる育成システムであったが、90年以降長期雇用体制の崩壊が進み、企業内教育は著しく困難になってきた。一方、若年失業者や非正規労働者が増加している事態の進行は公共職業訓練の必要性を示唆している。こうした中で、国や自治体の公共職業訓練の具体的展開過程とその特徴について明らかにして、わが国人材育成システムに占める公共職業訓練の役割,機能を検討した。以下、調査研究の成果を記しておく。 (1)公共職業訓練校の入校状況に関して、新規高卒者の重要な進学先として位置づいていることである。新規高卒者の占める比率は北海道では8割、福岡県でも5割前後を占めていた。 (2)就職(出口)に関しては、「ものづくり」関連企業、産業に多くの人材を輩出していると同時に、地域の中小零細企業に技能者を供給していることである。自治体の訓練校では、機械・メカトロニクス系、電気・電子系、金属加工・木材加工系、自動車整備系などの中小企業におけるものづくり系が多くを占めていた。国の訓練校の場合、一部大企業を含む中小企業では研究開発の補助、生産技術、品質管理、試作などいわゆるテクニシャンの業務に従事していた。 (3)民間との役割分担が争点となり、公共職業訓練の統合・再編が進む中で、必ずしも経済的に恵まれない若年求職者に対して労働能力を修得するための貴重な教育機関として位置づいていることである。とはいえ、最近、「受益者負担」を理由として授業料を徴収する自治体が増加している。 (4)学卒訓練を行う普通課程においては、雇用保険期間の延長を目的とするケースも多く、公共職業訓練はいわゆる雇用のセーフティネットの役割・機能を果たしている。
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