昨年度に引き続き、国立国会図書館で、新聞記事からの資料収集を行うとともに、北九州市立中央図書館や、友枝保育所があった上毛町(町村合併により、友枝村は現在上毛町になっている)図書館でも資料収集を行った。『福岡県議会史』に、モデル保育所に関する議事があったので、当時の「福岡県議会議事録」を所蔵している北九州市立若松図書館を訪ね、資料を収集した。 資料のなかった友枝保育所は、現在は統合されてなくなっているため、友枝小学校を訪ね、当時の保育所が写っている航空写真をはじめ、資料を入手した。友枝保育所で保母をしていた方と、当時の卒業生の方々に聞き取り調査をすることができ、モデル保育所としての公開保育当日の様子についても明らかになった。大牟田の小浜保育所では、アルバムから当時の写真を写させてもらうことができた。 集めた資料を順次分析して、日本教育学会第69回大会(2010年8月、広島大学)で、「福岡県における戦後のモデル保育所に関する実証的研究-その2-」として、上広川幼児園について発表した。これをもとに『愛知県立大学児童教育学科論集』第45号に「福岡県における戦後モデル保育所の研究-上広川幼児園の事例から-」をまとめた。 モデル保育所に指定されたところは、県の要請を受けて、運営や保育内容の充実化のために受け身的に努力したのではなく、それぞれの保育理念や地域の独自性を十分に踏まえながら、より積極的に新しい保育の創造に向けて努力していたことが、諸資料や証言内容から解明できた。また、モデル保育所の公開保育・研究会には多くの保育関係者が参加し、保育をよくしていこうとする努力がなされていたことも明らかになった。
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