エフェクティブ・スクール(effective school、「効果のある学校」)であるカミノ・ヌエボ・チャーター・アカデミーの事例分析を行った(「コミュニティ・スクールとしてのチャータースクールスクール」『法政大学キャリアデザイン学部紀要』第6号)。この学校は、ロサンジェルス都市学区の貧困地域に立地するが、学校全体で高い学業達成を果たし、学校内部においても学業達成の格差をかなり縮減させた学校である。こうした学校効果(school effectiveness)を生み出した要因には、地域開発NPOの企業家活動、教育管理職のリーダーシップ、教員間の協働、内発的な内部アカンタビリティ(internal accountability)という諸要素の新結合があった。 特に、リーダーシップでは、教育的リーダーシップと革新的リーダーシップが2元論的に設定される通説に対して、両者の結合こそが鍵となることを事実で示した。また、教育アカンタビリティでも、外部からのアカンタビリティ要請に対して、内部アカンタビリティの構築が学校改善にとって有意義であり、その3要素(教員個人のリスポンシビリティ、集団的な教育理念の共有、外部に対する結果・説明責任)を析出できた。 本年度のもう一つの成果は、学習環境デザインについて、高等教育における学部という基礎単位の事例分析をなしたことである(「大学におけるキャリア教育の試論的覚書」『生涯学習とキャリアデザイン』Vol.6)。学習環境デザインのコアとなるカリキュラム・デザインを高等教育のユニバーサル化と関係させ、また、最近の政策的論点でもあるキャリア教育とも接合して、一つの学部を包括的に分析した。学部論というテーマが、意外にも研究対象となっていない現状に一石を投じた試論である。
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