本研究は、エフェクティブ・スクール(「効果のある学校」)の事例研究を目的とした。事例は新しいタイプの公立学校といわれるチャータースクールの中から選択された。最終年度の研究は、アメリカ合衆国で開催された三つの学会や全国集会への参加を節目にして、研究総括的になされた。2010年5月のアメリカ教育学会年次集会(AERA Annual Meeting)、6月のチャータースクール全国集会(Natianal Charter Schools Conference)、そして、11月のエッセンシャル・スクール秋期集会 (Coalition of Essential Schools Fall Forum)である。これらの機会において、最新の研究情報を収集し、研究者や学校管理者、教職員と研究的及び実践的な問題を議論できた。その結果、「効果のある」チャータースクールであるための組織及びマネジメントの要素として、次の中範囲理論の諸カテゴリーを析出できた。公共的所有権(public ownership)、積極的市民参加(civic engagement)、熟議民主主義(deliberative democracy)、内発的(internal)アカンタビリティ、革新的・分散的(transformational/distributed)リーダーシップ、民主的同僚性(democratic collegiality)、関係的信頼(relational trust)という組織特性のカテゴリー群である。そして、この総括的な理論的仮説を踏まえて、3年間に渡る諸事例研究の精査を始めた。特に、エッセンシャル・スクールの教職開発学校であるフランシス・パーカー・エッセンシャル・チャータースクール(マサチューセッツ州)に注目し、事例分析をほぼ終えた。加えて、アメリカ合衆国のエフェクティブ・スクールやチャータースクールの組織特性を相対化するために、国際学力比較調査で好成績をあげるシンガポールに注目し、現地調査を実施した。その調査の第一報として、「シンガポールの学校改革-研究ノート(1)」(法政大学『教職資格課程年報』8号)を公表した。
|