本研究の目的は、1990年代以降取り組まれている若者支援政策が、移行期の構造的変容という状況にとって、効果的に作用しているか否かについて、二極化と社会関係資本という2つのキーワードを手がかりに検討することにある。具体的には、若年移行期の変容が、移行期のあらたな二極化として進行しつつあることについて、各国統計や既存の長期継続調査など量的データをもとに明らかにする作業、および、日欧各国で着手されてきた若年支援政策が、二極化の進行にどう作用しつつあるかについて、特徴的な数ヵ国(日本、英国、フィンランド)を対象として、支援における社会関係資本の果たす役割に着目しつつ、オリジナルな質的調査にもとづき比較検討する作業を予定している。 本研究2年目の2009年度においては、以下の研究・調査・成果報告を実施した。1.量的データに関する検討については、日本に関しては前年度来参加している他の科学研究費補助金を受けた長期継続調査に引きつづき参加し、若者たちの社会関係と背景・経歴に着目した研究報告をおこなった。フィンランドに関しては、参照資料収集をおこなった。2.質的調査については、フィンランドに関して現地で継続的調査を実施するとともに、前年度調査の報告を作成した。英国に関しては、2009年度中に現地調査を実施することができなかったが、数点の有望な先行研究・調査を入手するとともに、前年度までの調査をふまえて、数本の研究報告・論文を作成・公表した。すでに現地でインフォーマント紹介の仲立ちを得ている段階なので、2010年度には現地調査を再開する予定である。
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