本研究の目的は、1990年代以降取り組まれている若者支援政策が、移行期の構造的変容という状況にとって、効果的に作用しているか否かについて、二極化と社会関係資本という2つのキーワードを手がかりに検討することにある。具体的には、若年移行期の変容が、移行期のあらたな二極化として進行しつつあることについて、各国統計や既存の長期継続調査など量的データをもとに明らかにする作業、および、日欧各国で着手されてきた若年支援政策が、二極化の進行にどう作用しつつあるかについて、特徴的な数力国(日本、英国、アイルランド、フィンランド)を対象として、支援における社会関係資本の果たす役割に着目しつつ、オリジナルな質的調査にもとづき比較検討する作業を予定している。調査三年目の平成22年度には、フィンランドの統計データ、各国における社会福祉サービスへのアプローチなど、これまで十分着手できずにいた領域に関する現地調査を主たる課題とした。 実際に平成22年度中に実施できたのは、英国、アイルランド、デンマークにおける若者支援現場への訪問調査、具体的には英国では、ロンドンにおけるdetached youth workの現場、アイルランドでは、コークの困難な地域コミュニティにおけるyouth centreの現場、デンマークでは、従来アプローチしてきたフィンランドにおけるworkshopの源流をなすproduction school(生産学校)への訪問、ヒアリング調査であった。 前年度まで、そして今年度の調査研究を通じて明らかになりつつあるのは、若年移行期の二極化が、高等教育進学如何などいくつかの媒介通じていずれの国でも何かしら進行しつつあるが、そのプロセスと態様は国によって大きく異なること、若者支援政策では、いずれの場合も社会関係資本は重要な手がかりになるが、その性格、位置づけはやはり議論や分岐があることなどである。
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