本研究では、(1)若年移行期の変容が各国共通して移行期の二極化として進行しつつあることを明らかにし、(2)1990年代以降日欧各国で着手されてきた若年支援政策が、この二極化にどう作用しつつあるかについて、(3)支援における「社会関係資本(ソーシャル・キャピタル)」の果たす役割に着目しつつ、日本、英国、フィンランドを主たる対象として比較検討することが目的である。 (1)については、各国の雇用統計、学卒者統計、長期的調査longitudinal researchの成果からの検討を主たる柱とし、(2)については、各国とも、ユースワーカー、ソーシャルユースワーカーの仕事のヒアリングを通して、どのような性格の支援がなされ、若者たちがどのような経過(biography)をたどっているか、継続的な質的研究を実施してきた。 平成23年度は、フィンランドおよびイギリスへの調査出張を実施し、上記の質的調査を継続的に実施した。これまでの成果の一端は、研究的媒体だけでなく、教育実践関係者が日常的にふれる教育雑誌にも連載などの形で表してきた。同時に23年度中には、職業世界における学習をテーマにした国際学会で招待講演の機会を与えられ、本比較研究を通して得られた日本の若者政策に関する知見を海外に向けて提起することもできた。 これまでも認知されてきたことだが、今年度の研究を通じていっそう明確に確認できたのは以下の点である。(1)フィンランド、イギリスいずれにおいても、すなわちリーマンショック以降の欧州においては総じて、ソーシャル・ユースワークと呼ばれる、ユースワークを介したソーシャルワークへと、ユースワーク領域全体のシフトがより顕著に進みつつあること。(2)ソーシャル・ユースワークにおいては、ソーシャル・キャピタルが援助の資源とされることが一般的であること。(3)しかしながら、ユースワーカーにとっても、ソーシャル・ユースワークの若者支援としての意義については拮抗する議論がある。
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