1.本研究は、教員養成「基準」の存在に支えられた入職ルートの「多様化」が、地域の教員確保【量】と大学における教員養成の改革【質】の両面にもたらすインパクトについて、現代のイギリス(本研究ではイングランドに限定する)を対象として検討しようとする3ヶ年計画の研究である。2.第1年度にあたる本年は、文献収集と調査を行った。調査では、「基準」を軸とする資質管理策のなかで「学校における教員養成」をはじめとする「多様化」が進んだ過程について、海外研究協力者であるProfessor Patrick Easen (Northumbria University)からノーサンブリア地域での対応を中心に教示を受けた。また、近年、入職ルートの「多様化」のなかで、修士課程レベルの教員養成がクローズアップされてきていたが、本研究の申請時以降、教職修士号(Masters in Teaching and Learning)の2009年度からの導入が提案されるという新たな展開があった。そのため、教職修士号導入の意図と全体的な見通しについて教員養成政策・管理の担当機関であるTraining and Development Agency for Schools、教員養成提供者としての大学側の見解をUniversities Council for the Education of Teachersを訪問してインタビューを行った。さらに、オックスフォード大学教育学研究科の図書館において、現代の教師教育改革の背景に関する資料、同大学の中等学校教員養成課程に関する資料(履修手引書など当該課程履修生に配付する資料)など研究遂行のための基本的資料の収集を行った。これらをふまえ、代表者・分担者のそれぞれが、「基準」を軸とする教員養成の管理システム及び入職ルートの「多様化」の実態を分析する雑誌論文の執筆と学会発表を行った。
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