1.本研究は、教員養成「基準」の存在に支えられた入職ルートの「多様化」が、地域の教員確保【量】と大学における教員養成の改革【質】の両面にもたらすインパクトについて、現代のイギリス(本研究ではイングランドに限定する)を対象として検討しようとする3ヶ年計画の研究である。 2.(1)最終年度である本年度は、昨年度までに実施した調査や収集資料の整理・分析を行った。また、2010年5月に労働党政権から保守・自由民主両党による連立政権へという変化があったことをうけ、両政権の教師教育政策間にみられる連続性と断絶・方針転換についての基礎的な検証を行った。 (2)入職ルートを「多様化」するという方向性には政権交代後も変化はないが、連立政権では、「学校における教員養成School Centred Initial Teacher Training」と「雇用ベースの教員養成Employment Based Initial Teacher Thraining」への徹底した移行、それと関わって高等教育機関独自の貢献を期待しない姿勢が明確になっている。 (3)”「基準」を設定しそれを軸にして課程認定-査察-予算の配分を結びつける”という教員養成の「質保証」のあり方について、それが教員養成提供者に大きな負担を強いていて軽減が必要であるという点は、すでに労働党政権下で明確に指摘されていた。連立政権は、同様の認識に立ちつつも、諸権限を準政府機関から教育大臣へと回収する方向であり、今後、「質保証」システムの変化が予想される。 これらの状況から、労働党政権下で全国的な「基準」が個別の教員養成提供機関においてどのように咀嚼され実用に用いられていたかを資料として残す必要があると判断し、「学校における教員養成」の優れた提供者と評価されているPilgrim Partnership(Bedford)の資料を訳出した。
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