本研究は、女性労働運動における労働組合スタッフの力量形成を目的とする。そのさい、 a)労働組合の日常の活動のなかから、女性が働き続けるための主体形成をとらえる、 b)各地の組合スタッフが比較的長期のスパンを持って自分の「実践」を振り返り、語り合うこと、それらを記録化していく取り組みにより、組合員とスタッフの関係、状況の中で判断していることの意味を考えることに取り組む。 日々、深刻で緊急を要する労働問題に当事者と共に取り組んでいる労組スタッフは、力量形成を切実に必要としている。しかし、プログラムが外在的に決定されているような学習や、マニュアルやスキルの習得のような学習観では、スタッフが経験している現実と結びついていかない。そこで、異なる地域の、異なる現実に対面している労働組合スタッフが、実践を語り合い聞きあっていくことが「省察的実践者」としての力になるのではないかと考える。本研究は、労組スタッフと研究者の相互主体的なかかわりをとおして、プロジェクトの展開をあとづけるものである。 とくに女性労働運動を取り上げる理由は、女性が男性に比べ相対的に教育の機会が少ないためである。非正規雇用が多い女性は企業内での教育訓練を受けにくく、長期間の宿泊を伴う労働組合の幹部養成教育にも家族的責任を担う女性は参加しづらい。 また全国の女性ユニオンは、働く女性の全国センター(ACW2)などを通じて連帯を深めようとしているが、こうした取り組みに女性の共同的な学習が組み込まれていくことは、それぞれの地域の力量形成にもつながっていくことが期待されるものである。
|