2010年度は、本研究の最終年度であり、2年間にわたる調査をまとめる作業を行った。 1年目(2008年)には、乳児保育室の空間構成が0歳児の行為に与える影響について調査した。0歳児クラスは、高月齢と低月齢の2クラスあったが、これまで分析をしたのは前者のクラスのみだけであった。そこで課題として残されていた低月齢クラスの分析を行った。その際に注目したのは、自由遊び時間における子どもと保育者の「動線」である。以前、他園の0歳児クラスにおける子どもの動きを分析したことはあるが、そのときの反省をふまええて子どもの行為を分析する指標として動線を位置づける大切さを指摘した。動線は保育現場において実際に保育者が子どもの生活や遊びを振り返るときに使う視点である。本研究では、それをビデオ観察によってより実証的に分析を加ええ、動線を実践的かつ実証的な指標として位置づけた。 2年目(2009年)は、保育室の空間構成に加えて、新たに音環境にも注目した。昨年度は、調査園の1歳児室が同研究グループの志村洋子が以前明らかにしたように、子どもにとってけっして好ましい状況にないことを明らかにした(自由遊び30分間、80デシベル(dB)を超える回数は100回を超える)。しかし音環境の改善にともなって子どもの行為がどのように変化していったのかまでは分析できなかった。そこで今年度は、改めて騒音計にて測定した保育室の音環境データと自由遊び時間の撮影ビデオを分析しなおし、両者の関係を探った。その結果、保育室の音環境が改善されていくことにより、子どもが落ち着いて遊ぶようになっていることが明らかになりつつある。 以上の研究結果は、これまで研究の少ない乳児保育、しかも保育室の環境に注目したという点において、また環境構成に注目した保育という実践を通じて子どもの変化を探ったという点において、重要であると考えている。
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