昨年度の文献調査の結果にもとづき、就学準備の概念整理や諸外国での取り組みの概観をしたうえで、わが国における就学準備という用語の扱いに考察を加えた論文を執筆した。また、就学準備の具体的内容に関する質問票も作成し、保育実践における問題点の質問事項を含め、浜松市内のすべての保育所と幼稚園に勤務する日本人保育者向けにアンケート調査を実施した。在日南米人の幼児の保育に携わっている、もしくは過去に携わった経験のある保育者に回答を求め、各園で最大3名が回答できるようにし、計193園に質問票を郵送した。結果、全体の72%の園から回答を得たが、該当者なしと回答した園も57園と多く、在日南米人幼児の通う保育施設には地理的に偏りのあることが再確認された。最終的には、保育所勤務の保育者111名と幼稚園の保育者72名からの回答を得た。結果は現在、分析中であり、来年度に論文としてまとめる予定である。就学準備に関する同様の質問を含んだアンケートは、今後、日本人保育者以外の関係者に対しても実施し、今回得られた結果との比較分析に活用される。なお、本アンケート調査は当初は外国人保護者に対して実施する予定であったが、それは来年度実施予定の調査に含めることとし、今年度の調査対象は日本人保育者とした。他府県での外国人幼児に対する就学準備プログラムの調査については、愛知県を事例に、県の支援による公立保育所でのプレスクール事業と民間団体主体による事業2件の内容を比較検討し、各事業が目標とする就学前に習得しておくべき具体的能力や態度を明らかにして、論文にまとめた。さらに、短期間の就学前学校体験プログラムを受講した在日南米人児童の小学1年生学級での観察を通しては、入学直後の学校生活への適応という点ではある程度の効果が見られたが、結果的には全員が通常の授業についていけず、就学前段階での長期的な支援の必要性が確認されている。
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