日本人保育者向けアンケート調査結果の分析を終えた。南米人幼児の就学準備の何を重要視しているのかについては重要度の高い方から順に、身体的発達、社会的発達、情緒的発達、コミュニケーション能力、知的発達となり、知的発達の領域だけが他と比較して重要度が低かった。一方で、南米人幼児の保育経験が豊富な保育者は知的発達をより重視していることもわかった。幼児にとって習得が最も困難な就学準備としては「自分の気持ちを言葉で相手に伝える」ことが挙げられ、家庭での日本語学習の支援についても「あまり行っていない」という回答が最多であったが、園では南米人幼児を日本人幼児と平等に扱うことが奨励され、家庭の教育的環境の差に配慮した特別な教育活動を行う園はなかった。これらの結果については日本国際教育学会(2011年3月19日)にて発表予定であったが、東日本大震災の影響により学会は中止となった。本年度は外国人保育者を対象に就学準備に関するアンケート調査を実施した。浜松市内の21カ園に郵送したが、回収率が低かったため、現在は個別訪問などを通して回収率改善を図っている。また、日系南米人の幼児が多く通う認可外保育所において年長児クラスの継続的な観察調査を行い、保育内容や方法にどのような工夫や配慮があるのかを調べた。規範意識や社会性の育成はもとより、日本語の読み書きや算数の教育が積極的に行われ、人前で日本語を話すことの奨励や日本の文化習慣の学習に加え、母語教育も施されていた。また、同園において来年度小学1学年に進級予定の南米人幼児8名について、就学前段階での知的発達水準の検査を日本語で行うとともに、ポルトガル語での語彙検査も実施し、保育者の聞き取り調査を通して相対的な社会的発達度についてもデータを得た。来年度はこれら幼児の就学後の追跡調査を行い、具体的にどのような内容や水準の就学準備が就学後により重要になるのかを探っていく。
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