研究計画当初に記載されている通り、平成21年度の第1の課題は、州の制定する直轄管理法の内容の分析を平成20年度に引き続いて行った。およそ半数の州で直轄管理法が制定されており、各州の直轄管理法は政治的特徴、特に州議会の党派別構成や、州知事の所属政党に大きく影響されることが分かった。 第二の課題は、州直轄管理をめぐる教育統治理論の現状について明らかにすることであった。学校改善のためには州による直轄管理こそ一体的・効率的・効果的であるとの支持論や、教育の地方自治への侵害、教育に関わる州権の強化や中央集権化、都市問題の根本的解決ではない道具主義的方法であるとといった批判論が展開されている。本年度においては、特に、直轄管理を主導する州知事、州教育庁、州議会の政治的ダイナミズムについて考察を加えた。 第三には、上記の本年度の研究課題に即して、二つの事例市を対象にして州直轄管理の導入、論争、帰結、子どもの学力への影響について詳細に検討した。事例市はボルティモアとフィラデルフィアである。両市とも直轄管理の特徴として、「州-市パートナーシップ」の原則の下で教育統治改革を推進していった。そして、前者の都市は「公-私パートナーシップ」の要素が加味され、後者の都市は「多数プロバイダーモデル」を基盤とした教育統治が進められた。これらの研究の成果はそれぞれ著書・論文として公表されている。 平成21年度には、当初、アメリカでの現地調査を予定していた。ところが、アメリカで収集予定であった資料が電子ファイルで入手できたことや、貴重な情報を電子メールで獲得できたことなどによって、訪米の予定を中止し他。同時に、不足していた図書購入費を中心とした支出を行った。
|