本年度の研究成果は、州直轄管理の中でも州議会が市長に学校ないし学区の管理運営にかかわる権限を付与する市長直轄管理を中心として検討を進め、論文として公表した。すなわち、本研究の主題である教育統治の州直轄管理は以下の二つの側面を持っている。一つは、州議会の承認を経て州の教育当局や知事が「学区改革委員会」等の名称の統治機関を設置して地方学区や学校を運営する州直轄管理である。二つには、州が地方教育委員会の有していた権限を部分的ないし全面的に市長に委譲することによって実現する市長直轄管理である。2008年度における教育統治に関わる州法の内容分析や代表的な州直轄管理事例都市の資料収集や資料解読を踏まえて、2009年度に成果として3本の論文を公表した。これらの2年間の成果を基盤として、20lO年度には市長直轄管理がもたらされた要因を多様な角度から分析することを目指して、2本の論文を公表した。アメリカの都市教育統治の抜本的な再編である直轄管理政策の導入は、特に都市学区に特有の政策になっており、既存の教育委員会が機能不全を来しており、そのための重要な代替案として取り入れられた政策であること、この政策が教育の地方自治原則を大きく脅かすものであること、他の都市にもこの政策が広がるか否かは未定であること、児童生徒の学校教育の成果に関して調査が行われているものの政策の成否についての判断は時期尚早であること。以上が本研究の総括的な結論である。
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