本研究では、国際的に移動する中国人家族を調査し、子どもに対する家庭の教育戦略を移動・適応過程との関わりからとらえなおし、またそうした過程において動員した様々な資本の利用について調査・考察した。調査では首都圏に在住する中国人家族のほか、カナダに再移住した家族や中国に帰国した家族に対しても、追跡の面接調査を行った。その結果、以下の三つの側面から示唆が得られた。(1)子どもに対する教育戦略は移住戦略、異文化に対する適応過程においてとらえる必要があること、(2)異文化適応過程において家族関係、家族の役割変化が起き、在日中国人の場合、特に母親の役割変容が家庭における教育に大きな影響を与えること、(3)移住戦略は子どもの成長などの要因に従って変容し、またその実現に家族が持つ社会的ネットワークに深く関係する。
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