中国の経済発展は目覚しく、それを支える職業教育は、職業教育法の施行(1996)や、労働市場の自由化と併行して職業教育の民間開放政策が段階的に実施されたことに伴い、最近10年間で様変わりしており、今なお変化の渦中にある。本研究においては、こうしためまぐるしく変化している中国の職業教育の現状を、不均衡な経済発展や農村人口の流動化など中国の抱える個別問題や、歴史・文化への理解にまで踏み込んで、解明することをめざした。具体的には、正規の学校制度上に位置づけられる職業高校の民営化の実態を究明した。また、中国の大企業が企業経営の合理化を進める中で、進めている職業教育のアウトソーシング(外注化、社会化)の実態を解明した。更に、それらの背景となる中国の農村教育の実態をはじめ、職業教育機関に生徒を送り出す側である農民工の置かれている現状と課題についても解明した。 中国東北部の職業教育機関を訪問調査して、各種職業教育機関(技工学校、職業高校、中等専業学校)の入口(生徒確保)と出口(就職先確保)の問題を中心に、それら諸学校のカリキュラム改革の動きも含めて、最新の状況を把握することに努めた。具体的には、機械、貿易、畜産加工、自動車整備などの学校を訪問調査し、校長や教務主任等から話を聞き、資料提供を受けた。また、中国側研究者に来日してもらい、日本の職業教育(総合学科高校、農林高校、専門学校、商業高校等)について調査して比較研究の糸口をつかんでもらうとともに、日本国際教育学会で中国側と共同でプロジェクト研究発表を行った。
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