中国の経済発展は目覚しく、それを支える職業教育は、職業教育法の施行(1996)や、労働市場の自由化と併行して職業教育の民間開放政策が段階的に実施されたことに伴い、最近10年間で様変わりしており、今なお変化の渦中にある。本研究においては、こうしためまぐるしく変化している中国の職業教育の現状を、不均衡な経済発展や農村人口の流動化など中国の抱える個別問題や、歴史・文化への理解にまで踏み込んで、解明することをめざした。 21年度は、2009年8月に中国上海で資料調査を行い、上海図書館等で本科研費のテーマに関係する資料を収集・分析した。 また、2009年9月に中国広州で職業学校教育の調査を行った。この調査は、中国曁南大学の鞠玉華教授の全面的協力により実施し、広州市内・近郊及び深〓にある職業高校、技工学校(中等教育段階)及び職業技術学院(高等教育段階)を数校訪問して、各種職業教育機関の棲み分け状況、進学時の接続の問題、就職状況(日系企業への就職を含む)、職業教育機関と普通教育機関の競合・競争の状況、カリキュラムの特徴、設立母体との関係、日本語教育の状況や人気度、業界団体や企業との関係、実習訓練の実施方式等を聞き取り調査し、そこで学ぶ生徒にもインタビューするなどして、彼らの進学動機を調べた。中国の大企業が企業経営の合理化を進める中で、進めている職業教育のアウトソーシング(外注化、社会化)の実態の解明も行い、東北地区の状況との共通点や相違点の把握につとめた。
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