1. 平和な社会の形成活動として、地方公共団体が行う平和事業における平和啓発活動を分析した。 (1)これらは、地方自治体が議会で予算を承認した公的な(オーソライズされた)平和事業で1990年代に広がり、学校がその地域で地方公共団体と協働して平和教育活動を行うことが可能となった。(2)平和啓発活動を分類して、平和事業への参加型(平和祈念式・平和コンサートへの参加など)、応募型(ポスター展への応募)、選抜型(広島・長崎研修への子ども特使の派遣や姉妹都市への派遣など)、支援型(自治体予算により被爆者の話を聞く)などの協働の類型を見いだした。 2. 平和教育実践者の社会化過程を、日本国内の平和教育実践者の手記的文章の分析および質問紙調査により分析した。(1)手記的文章では、平和教育実践者は1990年代に戦争第一世代から第二世代に順次移行している。平和教育を始めたきっかけは、第一次世では戦争体験へのこだわりや反戦政治運動への参加が挙げられる。第二世代では戦争を伝えるエイジェント(資料館、戦争体験者、マンガ、平和教育実践者)との出会いが影響を及ぼしている。(2)平和教育に関心を持つ院生21名と現場教師25名の質問紙調査では、現場教師が平和教育に関心を持ったきっかけは、修学旅行への引率が多い。若手の教師では、平和教育が盛んな学校への配属や、熱心な同僚の先生の影響が挙げられた。アジアへの戦争加害を実践課題とするのは年配の教師に多いなどが示された。 3. 平和教育の授業プログラムを実施した。カリキュラム内容は、(1)平和教育の理論・歴史・国際比較、(2)ワークショップ、ロールプレイ、平和啓発プレゼンテーションなどの受講生参加型の手法、(3)平和教育の授業案検討と、模擬授業で教育方法を体験、(4)平和博物館訪問や軍都伏見区のフィールドワークなどの学外研修、などで構成した。
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