本研究の目的はボーダーフリー大学、いわゆる底辺大学と呼ばれる大学に在学する学生の実態を調査することで学生の学習行動、および生活実態を明らかにし、さらにはその結果をもとにボーダーフリー大学における今後の学生指導のあり方を示唆することである。 平成22年度は大きく以下の2点について研究を進めた。 1)前年度までのアンケートの分析結果にもとづき、学生、教員に対するインタビュー調査を行った。アンケート調査では、ボーダーフリー大学の学生は地方国立大学や中堅私立大学の学生よりも、強い学習意欲を持っていることが確認された。インタビューにおいても、結果は同様であり、学生たちは総じて強い学習を示していた。しかし、教員へのインタビューなどから、そうしたボーダーフリー大学の学生の意識は表面的なものに過ぎず、実際の学習時間などはごくわずかにすぎないことが明らかにされた。このことはボーダーフリー大学の学生が強く学校化されていることを示している。つまり、学校での支配的言説に意識が規定されるとともに、それに準じた表面的な意欲を提示することで学校・教師から高い評価を受けると考えられている。したがって、アンケートなどの調査では、そうした表面的な結果しか明らかにすることができない。今後は、こうした学生の意識と行動をさらに深く調査するとともに、それらを分析する方法論を検討する必要があろう。 2)以上のような分析結果を踏まえてボーダーフリー大学の学生を分析する際の困難さなどについて方法論的な検討を行った。それとともにこれまでの研究成果をまとめた。
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