| 研究概要 |
本研究は、グローバル化の進む今日、事実上の多文化社会を現出したヨーロッパ、EU諸国において、多文化市民の共生のために求められている新しい市民教育としての異文化間教育の普及について、その方策と実態を解明することを目的としている。特に、当該社会の多文化化に即して、新しい教育が必要性であるという認識はあるものの、現状では、国民国家体制の維持を目指し、旧来型の国民教育から抜け出ることの難しい各国政府に対して、国家を超えて、新しい市民(「EU市民」という理想もこれに属すると考えられる)の育成を目指し、活発な活動を展開するNGOに着目し、それらの目指す多文化社会にふさわしい市民を育成する異文化間教育の普及について考察することを目標としている。
本年は、昨年に引き続き、EU域内及び旧東欧地域に対して異文化間教育、人権教育、ホロコースト教育の普及活動を活発に行う「アンネ・フランク・ハウス」(Anne Frank House、本部アムステルダムとベルリン事務所)の異文化間教育普及活動に関する調査、及びEU域内への異文化間教育の普及奨励を進めている「イベンス財団」(Evens Foundation,本部アントワープとパリ事務所)について実地調査を行うとともに、アントワープにおけるトイ・ライブラリーの活動、カトリック教会エディディオ修道会とその移民の子どもへの教育支援活動である「平和の学校」の実地調査を行い、その活動の概要を把握した。
また、AFHの活動に関しては、異文化間教育学会の年次大会において、この財団の異文化間教育に関する諸活動について、その意義と課題について発表した。
|
