欧米では多様な親教育プログラム(parenting program)が開発され実施されているが、それは単なる子育てスキルの伝授ではなく、親自身の社会的ニーズや心理的ニーズに焦点をあわせ、親のエンパワーメントを図るという視点を含んでいる。親の役割は社会的・文化的に形成されるものであり、長期的で包括的な親としての発達のプロセスの中で獲得される。本研究は、現代の親に対してその発達をいかに支援するかという視点から、欧米の親教育プログラムについて、その内容・方法・効果等を比較分析するものである。具体的には、イギリス、アメリカ及びカナダの親教育プログラムについて、その文化的背景や社会経済的背景等を考慮しつつ比較検討する。 本年度は、イングランド及びスコットランドにおいて現地調査を行い、具体的な親教育プログラムの資料を収集するとともに、家族支援や親教育の担当者に対してインタビューを行った。得られた知見の主なものは以下の通りである。(1)犯罪や非行の増加、貧困といった状況の中で、親教育に力を入れるようになった。(2)子どもと子育てをめぐる様々な問題に対して包括的に対応しようとしており、親教育はその一部である。(3)親子関係をいかに取り結ぶかに焦点を当てている(4)個別の地域ごとに親教育プログラムが開発・実施されており、地域のニーズに合わせたものとなっている。(5)学齢前の子どもの親が対象である場合が多いが、ティーンエイジャーの親に対する支援も始めている。(6)問題のある親ばかりではなく、すべての親に共通するニーズとして親教育を位置づけつつある。(7)学校との連携が大きなポイントとなる。(8)親教育プログラムをきっかけとして、ゆっくりとではあるが親としての発達が促され、親が自信をもって子育てに携わるようになっている。
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