本年度は、「自立支援」の対象となる若者あるいはその家族、また彼らを受け入れる関係緒機関、特に若者自立塾(NPO法人)に関わる総体的な調査活動を展開し、リサーチ・クエスチョンの生成に努めた。 具体的には、学校卒業後数年を過ぎてフリーターやニートとなっている若者、あるいは引きこもりを抱える保護者に聞き取り調査を実施した。彼らの勤労観の特徴を探るとともに、自立の課題や期待する支援のあり方を尋ね、ハローワークなど公的機関に対する親近感の不足という問題点を指摘した。他方で、家族からの生活援助や地元つながり文化の重要さ、居場所の必要性なども読み取ることができた。 また、若者自立塾を運営する3つの団体とひきこもり支援を行うNPOの親の会での観察と聞き取りを行った。宮城の若者自立塾では、不登校支援の延長として自然との触れ合いや冒険的な活動を行うことから自立を促していた。他方、東京の団体では、基本的な就労支援の活動に取り組むことで対人不安を解消しようとしていた。また、家庭訪問型の支援によってメンタルフレンドの形成から社会参加の糸口を探す方法もとられていた。他方、親の会では、家庭内の葛藤から深い自閉傾向に陥るケースでの心理療法的な実践についても、理解を深めることができた。 本研究における支援活動の多様性を理解し、次年度は海外での支援実践についても比較検討しつつ、「インクルージョン」を可能とする支援のあり方を検討していきたい。
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