アメリカ・カリフォルニア(研究拠点はカリフォルニア州立大学サンタクルーズ校)券中心に、若者の自立支援活動とその組織について、国際比較の視点がら、研究を発展的に遂行した。 当初は、いじめ(暴力)や薬物・銃器使用など非行の凶悪化に苦慮しているアメリカ社会において、近年の少年非行に関する司法制度の変容や教育組織の対応方法、とりわけゼロトレランス等の導入に関して調査した。具体的には、大学や高校・教育委員会などでの資料収集や研究者の行うゼミへの参加・専門家へのヒヤリングなど、基本的な理解を深めることを試みた。 またその後、初発型非行を対象として、青少年相互によって運営・実施される独自の裁判制度、「ティーンコート」による青少年の立ち直り支援への取り組みを、現場でフィールドワークやインタビューから詳細に読み解くことを行った。さらに、省因家庭や単親家庭など(core family)の出身で「困難状況にある生徒」(at risk student)'に対するオルタナティブプログラムを核とした教育的な自立支援についても実際の状況の聞き取りを行った。 その結果、アメリカの自立支援は人種構成や地域特性などによってその様態がきわめて多様であり、字校やNPO、警察等が一体となって、軽度の非行・逸脱行為から少年をいかに社会復帰させるかという「修復的な手法」を実践していることが理解できた。そこでは非行の実際を地域社会で共通理解し、少年たちに逸脱を犯した後のプラグマティックな対処方法(例えば、裁判の実践雲や再教育プログラムなど)を学習させる傾向が強い。他方日本では、非行や引きこもりなどのキャリアを隠し、密かに社会に包摂しようとするセルフ・リフレクティブな方法(「自己反省的な手法」)が重視される。ここには「自立困難な青少年」の存在に対する文化的な認識の相違が影響している。 1年間にわたってエスノグラフィックなフィールドワークを試みることによって、日本の青少年問題やその対処方法・指導理念と、アメリカのそれとの相違を体感することができ、同時にその問題設定と改善の方法論の違いを分析することができた。UCSCの「社会学コロキューム」でも、この調査分析結果を教授や学生に対してプレゼンテーションし、好評を博した。
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