本研究は、これまでに研究代表者らが形成してきた「養護教諭支援ネットワーク」を発展させつつ、これまでの研究実践の中で蓄積してきた養護教諭の日常的エスノメソドロジーをめぐる実践知を軸に、新たな社会的ニーズに応えるべく発展・創造していくことを目的としているが、初年度に当たる平成20年度では、(a)地域毎に展開しているワークショップにおいて、実践家とともに現場の日常に還元しうるパフォーマンス・テクストを共同で制作・シミュレーションし、そのパフォーマンス・テクストを行動の台本とすることで、個々の実践現場で主体的にヘルスプロモーションを展開することができるように支援し、(b)研究代表者が地域ごとに実施している個別のワークショップを母体に研究実践を進めることで、地域性や学校毎の社会的文脈を踏まえた活動のヴァリエーションや、養護教諭と他の教師らとの連携のあり方を比較社会学的にも考察するべく、研究を進めてきた。 ヘルスプロモーションの実施には、学校ごとの生態学的環境や組織的文脈(=教職員など人的資源)、学区的特性(=地域的文脈)、生徒指導上の個別具体的な事情など、社会的な諸条件を考慮し、ワークショップ企画時には、地域の養護教諭が集まりやすい教育センターやコアとなる養護教諭が勤務する学校の保健室を会場にヒアリングを重ねつつ、ワークショップを共同企画することで、現場に還元可能な形でヘルスプロモーションを具体的に展開する可能性を探るとともに、さらにホームページや養護教諭らが日常的に購読する定期刊行物への寄稿等を通じ、取り組みの周知をはかった。
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