最終年次の本年度は、文部科学省が直接的にかかわる個別的なプログラムとして注目される、外国人教員研修留学生制度による途上国からの現職教員の大学院受け入れプログラムについての分析と評価、および、青年海外協力隊「現職教員特別参加制度」による現職教員の海外派遣事業について、その実績の評価を試みた。さらに、三年間の研究成果を取りまとめて、最終的な研究成果報告書『わが国の国際教育協力の理念及び政策の歴史的系譜に関する研究』(冊子)を作成する活動を行った。報告書は、第一部〈論考〉(第一~第五章)と第二部〈資料編〉から構成される。第一章は、戦後復興、経済成長、開発途上国への援助事業の開始を背景に、1960年代のアジア地域での初等教育普及計画「カラチ・プラン」への支援を柱に、わが国が手さぐりで教育援助への関心と関与を深めて行く過程を記述した。第二章は、文部省内に設置された「アジア教育協力研究協議会」での活動と議論を経ながら、国家としての教育協力事業の基本方針と政策の策定を模索するプロセスを分析した。第三章は、1990年以降の文部(文部科学)省における国際教育協力への関心の復活と取り組みの強化の過程を、数次にわたる国際教育協力懇談会の各報告書の内容分析、政策立案と新規事業への取り組みについて記述した。第四章と第五章は、それぞれ、外国人教員研修留学生制度、および、青年海外協力隊「現職教員特別参加制度」について記述した。第二部は、資料編であり、わが国の国際教育協力政策にかかわる主要政策文書合計14点を集録した。とりわけ、1970年代以前の資料に関しては、従来ほとんど紹介されたことのないものであり、わが国における国際教育協力論議のルーツを知る上で貴重な歴史的文献であると考えられる。
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