本研究の目的は、美術館施設と学校教育の連携による教育プランの開発を通して両者の教育機能を実践的に検証し、関係者の人的交流や教育資源の共有化が地域社会の文化環境形成とその向上に及ぼす影響を分析することである。平成21年度は前年度の研究と成果を継続・発展させ、以下のような実績を残した。 1.前年度の成果を踏まえ、教育活動プランの充実に努めた。釧路市立美術館では現代芸術作家岡部昌生氏の大規模なフロッタージュワークショップを開催し、大学生及び市内の学校との連携のもとで作品制作を行い、企画展によって公開した。北海道立釧路芸術館では、ジュニアアートスクールにおいて研究代表者(佐々木宰)と大学院生による子ども向け造形活動のプログラムを作成し、ワークショップとして実施し、作品を企画展において公開した。これらの実績を通して、釧路市立美術館及び北海道立釧路校芸術館と大学、学校の連携に基づく事業の在り方、企画運営についての知見を得た。 2.研究代表者(佐々木宰)、釧路市立美術館学芸員(角井千代絵)、北海道立釧路芸術館学芸主査(柴勤)による調査チームを編成し、英国のロンドン及び地方の美術館・博物館、アートギャラリーにおける教育普及活動の実態調査行った。調査対象は、Whitechapelgallery(ロンドン)、Tate Liverpool(リバプール)、Modern Art Oxford(オックスフォード)、Fitzwilliam Museum(ケンブリッジ)であった。地方の美術館における教育普及活動の特殊性や独自の取り組みの実例、情報、資料が得られた。 3.調査報告会及び成果報告会を開き、今年度の成果を確認した。年間を通して通常の業務と並行して行うための持続的な事業の在り方を確認できた。
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