本研究は、2009年(平成21)5月に開始した裁判員裁判について、学習者が理解するためのゲーミング・シミュレーション教材「裁判員裁判」を開発することを目的とした。本研究は、筆者の提案する「役割体験学習論」に基づき、学習者に役割体験を通して知識と行為の統一を達成させ、社会的実践力を培う教材開発と実践を試みた。 まず、2008(平成20)年度には、法曹三者と連携し、刑事裁判の傍聴、検察官や弁護士による講義、秋田地方検察庁への訪問、殺人未遂事件シナリオ作成、ネット裁判員模擬裁判の実践、秋田大での法曹三者との模擬裁判実施、検察官や弁護士を招いた事後討議、弁護士と学生による公立中学校での裁判員裁判の授業実践等を行った。学生達は、現場での傍聴人の体験、法曹三者との交流体験、模擬裁判での裁判員や被告人等の擬似体験など、現実や仮想の場での様々な役割体験を通して、裁判員裁判を体得的に理解し知識と行為の統一を図り、社会的実践力を身に付けた。その上で、教師という役割になって公立中での授業も実践し、指導力の基礎・基本も身に付けた。さらには、学びの過程で、裁判員裁判の持つ制度的な問題点や実施上の懸念事項についても提示することができた。 2009年以降は、前年度の成果に基づき、ホームページ上に構築したネット裁判員模擬裁判システムの充実を図り、多くの閲覧者が裁判員裁判を理解し、裁判の模擬体験ができるようにした。2010年度は、筆者の学習理論に基づく法教育実践についてDVDを作成すると共に、『役割体験学習論に基づく法教育実践-裁判員裁判を体感する授業-』(現代人文社、2011年1月)を刊行し、研究の成果を公開した。
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