研究概要 |
本研究は,理科授業の中で児童生徒が関わる様々な外的リソースが思考活動にどのように作用し科学的な概念の形成に有効に働いていくのか,児童生徒の外的リソースの利用に問題はないのかを明らかにしながら,科学的な概念形成を図るための理科の教授・学習方法を構築し,構築した教授・学習方法を広く社会に提供していくことを目的としている。平成21年度の研究は,1.人間の認知活動に外的リソースがどのように働くかを明らかにする,2.外的リソースを活用した教授・学習方法の構築を行うとともに,構築した教授・学習方法により授業の効果を検証する,ということに重点をおいて進めた。 その結果,1.については,これまでの認知科学研究の成果をまとめてみると,外的資源は問題表象を構築する際に必要な知識や問題構造,ルールといった内的制約を外に顕在化する機能や,問題内の対象の物理的な操作,特性,効果の理解を容易にさせる機能があるといえることが明らかにすることができた。2.については,1の結果を踏まえ外的資源のもつ顕在性及び操作可能性ということに着目し実験授業を行ってみた。顕在性に着目して実施した実験授業からは,外的資源の持つ顕在性の機能は学習者に観察すべき視点を明確に促し,科学的な概念の形成に有効に働くことが示唆された。また,Beveridge&Parkins(1987)の研究に基づき顕在性の要因×操作可能性要因を設定した実験授業からは,理科授業における問題解決においても外的資源は必要な制約が顕在化され,操作可能となることで初めて問題解決に効果的に機能する様子を示すことができた。加えて,科学的な概念の形成に有効であることも示唆された。
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