本研究の目的は、我が国の小学校音楽教育が唱歌教育から脱皮し、音楽科教育としての成立条件を整備していった昭和初期、1930〜40年代の動向に焦点を当て、その形成過程の諸相を明らかにすることにある。 平成20年度は、当時の学校現場の状況をミクロに把握する事例研究として長野県飯田市と上田市への調査を実施した。一方で、当時の教育雑誌『学校音楽』等の記事や、『音楽年鑑』等の文献に見る蓄音器やレコード、楽器等の音楽の全般的な状況をふまえながら、長野県の事例研究を地域特性と学校音楽文化という視点、およびメディア論的論考を背景とする蓄音器やレコード、楽器といったモノ的要素に着目してまとめ、11月の日本音楽教育学会国立音楽大学大会において、共同企画の口頭発表を行った。モノ的要素に着目することによって、学校予算と寄付の文化の関係、また青年団や青年学校における音楽活動と小学校(国民学校)の音楽活動との関わりの様相が明らかになった。 先行する飯田調査に比較するため、同じ長野県でも地域特性の異なる上田市においても、特定の学校の所蔵文書資料等の調査をすすめ、現在はその資料の分析を継続している。それをもとに次年度には、上田市における当時の子どもたちへのアンケート調査を実施予定である。
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