研究者は教員養成課程において担当する授業活動を通して、教育実習の準備段階にある学生たちと児童の音楽表現との関わり方について、「音楽的体験を共有する『場』づくり」という視点から実践的に研究している。一方研究者は、イタリアの音楽教育について継続的に研究してきた立場から、特に2000年以降、イタリアでは各学校の実情に合ったカリキュラム編成と地域と連携した特色ある学校づくりが"autonomia"の名のもとに推進され、これら動向の中で舞台表現教育educazione a11a teatralitaのプロジェクトが活発化していることに注目した。舞台は様々な表現言語によって生成するが、そのような多角的、総合的に進められる表現教育において、音楽言語が他の表現言語と関わってどのように生かされるのか、先の「場」の考察と関連してイタリアの事例から考察する。 平成21年度は、文献とインターネットによる事前研究を行った後、平成21年2月28日〜3月11日の期間、ミラノ市を中心に下記の項目について実地調査を遂行した。 (1) ロンバルディア州教育研究所(Nucleo territoriale della Lombardia-Agenzia Nazionale per lo Sviluppo dell'Autonomia Scolastica在ミラノ)を訪問、同州学校と地域における舞台表現教育の取り組みについて調査。 (2) ミラノ・カトリック大学教員養成課程の舞台表現教育関連の授業、および現職教員を対象とした同大学マスターコースの研修活動を参観。 (3) Varese県Fagnano Olona市にある「舞台表現研究センター"舞台-教育"」(Centro Ricerche Teatrali“Teatro-Educazione")の取り組み、およびVarese県Gallarate市の高校の舞台表現教育の実践を視察。
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