研究概要 |
本研究は,文字の初期学習につまずきを示す者を対象として,その発達的特性や認知特性を考慮するとともに,学習者が置かれている学習場面の特性を考慮した文字学習に関する評価・支援方法を開発することを目的として実施された。特に平成22年度は,それまでの研究成果を踏まえ,試作した評価・支援方法の改善を図るための臨床研究を継続した。 具体的には,まず研究代表者が所属する大学の研究センターにおいて,発達障害,知的障害,肢体不自由などの障害のある者7名を対象として,隔週に1回ずつ書字の状況を把握したり日常の文字学習の様子について聞き取りを行ったりするとともに,その後の学習方法について本人と保護者に提案を行った。また,市内の小学校において,学習における特別な支援を求めていた児童35名を対象として放課後学習会を開催し,毎週1回ずつ文字学習を含む学習支援を実施して学習状況の変化を観察した。これらの臨床的研究を通して,読み書きに関連する認知機能や運筆機能の状態の評価方法を開発するとともに,他者との関係の中で,文字学習に対する意欲を引き出すための内発的動機づけに基づく支援方法を開発した。 本研究では,文字学習に対する動機づけや他者とのかかわりが生起する状況の評価をその観点に含め,認知特性と共に学習環境を含めた包括的な評価・支援方法の開発に努めたが,さらにより多様な発達状態にある者への支援方法についても検討を進めた。なお,本研究を推進するために,日本特殊教育学会,日本心理学会,日本神経心理学会,アメリカ心理学会において最新の研究動向に関する資料の収集を行った。また,研究成果の一部は上越教育大学特別支援教育実践研究センター紀要等に論文として公表した。
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