20年度は、ドイツの前期中等歴史教育における学力像を明らかにすべく、ドイツ歴史教師協会(VGD)が2006年に発表した『教育スタンダード歴史科-ギムナジウム第5-10学年段階用大綱的モデル』を取り上げ、幾つかの州における歴史科のレアプランなども参照しつつ、分析を行った。 その分析結果を日本社会科教育学会第58回全国研究大会(2008年10月12日、於滋賀大学)において発表した。また、「ドイツ歴史教師協会版教育スタンダードの歴史学力像」としてまとめ、『山梨大学教育人間科学部紀要』第10巻(2009年3月発行)に寄稿した。 ドイツ歴史教師協会の教育スタンダードは、インプット指向型のコンテント・スタンダードではなく、アウトプット指向型のパフォーマンス・スタンダードをねらったものである。歴史科を<思考教科>と捉える同協会の教育スタンダードでは、そのコンピテンシー領域として、「事象コンピテンシー」、「解釈・熟考コンピテンシー」、「メディアコンピテンシー/方法コンピテンシー」という三つが設定され、それぞれの領域ごとにスタンダードが設けられている。この教育スタンダードは、前期中等教育段階の修了時点において学習者がドイツ史・ヨーロッパ史・世界史の事象・動向・構造の認識・言述、歴史解釈の創造・吟味・活用としての歴史的思考、史資料分析と自立的共同的探究ができることを求めるものであり、歴史探究力を重視する歴史学力像に基づくものであるといえる。
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